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テーパ型電波暗室の説明

テーパ型電波暗室は、一般的な電波暗室の形状である直方体型とは動作機構が異なります。
直方体型電波暗室ではアンテナから照射された電波が側壁・天井・床面で反射するのを電波吸収体の電波吸収性能で減衰させ、QZ(Quiet Zone:被測定体の試験領域)に到達する反射波を抑制することが基本的な動作原理です。
テーパ型電波暗室ではこれとは動作機構が異なり、テーパ先端の幅の狭い箇所で基本モード(ドミナントモード)の電磁界を発生させます。この電磁界はテーパに沿って進み、その断面を徐々に拡大して行き、平面波となってQZに到達します。

このとき高次モードが発生すると、QZ上の電磁界はこれらの合成になり電界強度に不均一を生じて自由空間の状態と異なってしまいます。これにより、テーパ型電波暗室のテーパ部(側壁)には高次モードの発生を抑制するように、誘電体としての電波吸収体が取り付けられます(誘電体装荷型アンテナの原理)。また、テーパ部はQZ内の被測定物によって散乱、反射された電波の吸収も行います。

このように、テーパ型電波暗室では直方体型電波暗室のように大きな入射角の下で、反射を抑制させる必要がありません。よって直方体型電波暗室よりも、小さな幅、高さの電波暗室でも良好な無響特性が得られます。テーパ型電波暗室の照射アンテナは直方体型電波暗室と異となり、テーパの先端の限られた空間に置かれ、ドミナントモードを励振するために使用されます。

したがってテーパ部と励振アンテナの相互関係によって発生する電磁界の分布に差異が発生します。このことは、直方体形電波暗室よりも照射アンテナに注意を払うことが必要であることを意味しており、たとえば、偏波面を回転させて測定するアキシャルレシオ(軸比:どの程度円偏波に近いかを示す値)を良好にするためにはテーパの先端に位置する励振部の設計製作に細心の注意を払う必要があります。

  • ※電波吸収体は垂直入射で設計され、基本的には入射角が大きくなるほど性能が劣化します。よって、電波暗室の大きさ(幅・高さ)、送受信距離を一定とすれば、QZは部屋の高さ及び幅方向の中心に設定することが効率的となります。

テーパ型暗室の動作原理

テーパ型暗室は下図に示されるとおり一定の開き角を持ったテーパ部と被測定機器を設置する直方体部とで構成されている電波暗室です。

テーパー型電波暗室(不燃性吸収体使用例)

1.テーパ型直方体部
  • (1) バックウォール(後ろに配置した面)

    この部分は通常の電波暗室と同様に設計されます。下図のように左方より直接波は、バックウォールで反射され、クワイエットゾーン(QZ)に定在波を生じます。バックウォールの電波吸収体の電波吸収性能は、暗室の仕様を踏まえて吸収性能の高いものが要求されます。

    テーパー型電波暗室(不燃性吸収体使用例)

  • (2) 側壁、天井、床

    側壁、天井はQZに対して対称であり同一の動作をさせるので、同一の構成にする必要があります。これらの部分で必要とされる電波吸収性能は、QZ内の被測定物で散乱された直接波が側壁、天井で反射され再びQZに到達して定在波を生じさせないように散乱波を十分に減衰させる必要があります。
2.テーパ型電波暗室テーパ部
テーパ部は、断面を一定の割合で連続的に拡張させ、先端のアンテナから照射された電波が連続的な波面を持って拡張するように、その開き角や電波吸収体が選択されています。この部分の電波吸収体は、空間に比較して伝搬速度を低下させるとともに振幅を減衰させるように機能させます。

テーパ型電波暗室の設計

テーパ型電波暗室を設計するにあたり、QZの大きさを決めることが大きな要素となります。これはテーパ型暗室の大きさはQZの大きさと性能に依存するからです。

テーパ型電波暗室直方体部の電界は、導波管のドミナントモードと同様に両端が0となります。垂直偏波では、電波暗室立面に電界による sin関数の傾斜ができることになります。QZの範囲が決定されていれば電波暗室の幅を広げるほど、QZ内の電界の差はなくなることになります。

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